その人が必要なのか彼氏という存在が必要なのか①

偶然にも彼とは出身大学が同じで、共通の知り合いもいたため初対面から話が弾み次のデートもすぐに決まった。

緊張はしているが穏やかな雰囲気、使う言葉も柔らかい。男性の大きな声や強い響きの言葉が苦手な自分にとっては大変に関わりやすい相手だった。初回デートの印象が良く、友人にも「もしかしたら彼氏ができるかもしれない」と幸せオーラ全開で話していた。

ありがたいことにそれは相手も同様だったようで、3回目のデートで告白の言葉を頂き無事付き合うことになった。

今まで友人関係から付き合う流れが多かった自分にとっては、これは新しい試みだった。相手のことをまだ十分に知っているわけではないと不安もあった。しかし一度付き合うと決めたのであれば、価値観の相違により揉め事が起こった場合でも簡単に諦めることなく2人でしっかり話し合って解決していきたい、長く良いお付き合いをしていきたいと考え、彼と付き合うことになった。

それは彼も「同様の意見だ、田中さんとならしっかり話し合いができると思うし、ちゃんと話して解決していきたいと感じている」と伝えてくれたことを今思い出した。

今思えばお互い浮かれていたし、共通事項が多いということで勝手に運命を感じて勢いで付き合った可能性が高いのではと思う。

3年前に別れた彼氏とは私が振られて関係が終わった。理由は彼の浮気未遂発覚後、私が定期的にメンタル崩壊することに「疲れたから」。そんなこと知ったこっちゃねーよお前がもともとの原因だろふざけるなと思ったが疲れさせてしまったことは事実、自分の行いに反省すべき点が多くあるのだなと思い、次の彼氏が出来た時には『彼氏を疲れさせない愛される女』になってやろうとコラムやブログを読み漁った。愛されていそうな女性が書いている幸せハッピーオーラ満開のブログの内容を隅から隅まで覚え今の彼氏との関係に応用した。

その甲斐あってか、今の彼氏とは、わりと順調だった。そもそも基本的に彼が信頼できる（心の平穏を脅かすことのない）人であればメンタルが崩壊することは無いと気付いた。当たり前だが信頼できる人間と過ごすことは人間にとって大切だと強く実感した。逆に言えば、信頼できない（心の平穏を脅かす）人と一緒にいることは不健康だ。

私の反省点は、浮気未遂をした元彼のことを信頼できなくなっていたのに、無理に一緒にいたことだった。無理をして保たなければいけない関係なんて必要ない。特に恋愛においては。私は私自身で幸せでハッピーで素敵な女である。自身の健康が第一である。

関係が順調だったのは結局最初だけだった。結局は付け焼刃の知識だ。

一度彼氏ができると、手放すことが惜しくなる。「惜しくなる」というのは、手放した後、自分の未来（ここでは結婚している自分とする）がまた不確定なものになるからだ。結婚はしたい。できるなら早くしたい。子どもも欲しい。彼氏がいると、別れないという選択肢を選び続ければ、結婚はできるだろう。今私には結婚までの未来を手にすることは理論上難しいことではない。彼氏と別れると、その未来は遠ざかる。たった数カ月の付き合いでも、その不確定な未来が怖くなり、手放すことが惜しい。

今私は彼を信頼していない。心の平穏は脅かされている。しかし手放すことに躊躇している。過去の恋愛から得た判断基準に基づくと、彼との関係は不必要だと考えることができる。しかしなぜ手放すことができないのか、それは私には彼氏という存在が自分が「結婚している未来」に必要だからだ。なんてくだらない、貧相な思考なんだろう。